- ー 腎臓とは
- 腎臓とは、腰の高さの背中側に左右ひとつずつある臓器です。その働きは血液を濾過して尿を作り、水、電解質、老廃物を排泄する臓器です。そのほかにも、血圧の調節をしたり、ビタミンの活性に関わったり、血を増やす物質を作る働きもあります。
- ー 腎臓にできる腫瘍
- 腎臓には腎血管脂肪腫やオンコサイトーマのような良性腫瘍もありますが、腎臓にできる腫瘍の約9割は腎細胞がんです。男性が女性の2倍多い傾向にあります。また、透析患者さんに高率に発生することも報告されています。
- ー 症状
- 3大症状として、腹部腫瘤触知、疼痛、肉眼的血尿が言われていますが、これら全てが揃うことはほとんどありません。小さながんが人間ドックや検診などで発見されることが増えてきています。初期の段階では症状はありません。しかし、進行した状態で発見されることもあり、発熱、全身倦怠感、体重減少などをきたすことがあります。
- ー 検査
- 腎がんに有効な血液の検査はありません。画像診断で判断することになります。
- (1)超音波(エコー)検査
- プローブをおなかや背中にあてて、体内の臓器を調べる方法です。からだへの負担はほとんどありません。
- (2)CT検査 超音波(エコー)
- 検査よりも腫瘍の性状や拡がりを見ることができます。また、周囲臓器や離れた臓器への転移を見つけるためにも役立ちます。
- (3)MRI検査
- 強力な磁気を使って断層像をさまざまな方向から映し出すことができます。造影剤が使えない方にもできる検査ですが、ペースメーカーなど身体に金属を埋め込んでいる方にはできません。
- (4)骨シンチグラフィー
- 全身の骨に転移していないかを調べます。年齢による変性、骨折、打撲や外傷などでも同じように描出されますので、鑑別する必要があります。
- ー 腎がんの進行度
- Ⅰ期:腎臓内に限局している7cm以下のがん Ⅱ期:腎臓内に限局している7cmより大きいがん
Ⅲ期:腎臓周囲の組織(脂肪・血管)に拡がっていたり、1つのリンパ節に転移しているもの
Ⅳ期:腎臓周囲のGerota筋膜を超えたり、2個以上のリンパ節に転移したり、他の臓器に転移したもの
- ー 治療
- (1)手術
- 根治的腎摘除術 腎周囲脂肪組織も含め、がんを含め片側の腎臓を全て摘出する手術です。開腹術と腹腔鏡下手術の方法があります。 腎部分切除術・腫瘍核出術 がんとその周囲の腎臓の組織の一部を切除する方法です。開腹術と腹腔鏡下手術の方法があります。
- (2)サイトカイン療法
- インターフェロン療法やインターロイキン療法があります。手術後の補助療法として使う場合もありますが、肺転移に有効と言われております。
- (3)分子標的治療
- 分子標的薬による治療ができるようになりました。ネクサバールやスーテントなどのチロシンキナーゼ阻害剤に加えて、アフィニトールやトーリセルなどのmTOR阻害剤が使えるようになっております。今後、近い将来に幾つか新しい治療薬剤が使えるようになりそうです。
- ー 治療効果
- Ⅰ期、Ⅱ期の腎臓に限局している場合は5年生存率が約90%といわれていますⅢ期では約70%、Ⅳ期では約30%と悪くなってしまいます。免疫療法の効果は一般には15%ほどといわれています。早期発見によって治癒率が高くなります。