前立腺肥大症
ー 前立腺肥大症
膀胱の下にある前立腺が肥大して、尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。症状は次に説明するように、人によって、実にさまざま。健康なときには、無意識に済ませている排尿がスムーズにいかなくなることで、日常生活に大きな支障をきたします。
前立腺肥大の主な症状は
(1) 排尿後、まだ尿が残っている感じがする(残尿感)
(2) トイレが近い(頻尿)
(3) 尿が途中で途切れる(尿線途絶)
(4) 急に、尿意をもよおし、もれそうで我慢できない(尿意切迫感)
(5) 尿の勢いが弱い(尿勢低下)
(6) おなかに力を入れないと尿が出ない(腹圧排尿)
(7) 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
前立腺肥大症の症状を判定するためにIPSS(国際前立腺症状スコア)と呼ばれる問診表をよく用います。前立腺肥大症の症状に心当たりのある方は一度、自己診断をしてみて下さい。
<国際前立腺症状スコア>

最近1ヶ月間において

なし

まれに
(5回に1回未満)

たまに
(2回に1回未満)

ときどき
(2回に1回くらい)

しばしば
(2回に1回以上)

ほとんど
いつも

1

おしっこをした後尿がまだ残っている感じがありますか?

0

1

2

3

4

5

2

おしっこをした後、2時間以内にもう一度トイレに行くことがありますか?

0

1

2

3

4

5

3

おしっこの途中で、尿が途切れることがありますか?

0

1

2

3

4

5

4

尿意を我慢できないでもらしたり、トイレに急ぐことがありますか?

0

1

2

3

4

5

5

おしっこの勢いが弱いと感じるのは、どのくらいの頻度でみられますか?

0

1

2

3

4

5

6

おしっこの時にいきむことがありますか?それはどのくらいの頻度でみられますか?

0

1

2

3

4

5

7

一晩に何回くらいトイレに起きますか?

0回

1回

2回

3回

4回

5回

国際前立腺症状スコアの合計点から症状の程度を軽度(0~7点)、中等度(8~19点)、重度(20~35点)に分けます。中等度から重度の方は、一度泌尿器科受診をお勧めします。また軽度の方でも、50歳以上の方は、PSA(前立腺特異抗原)という前立腺がんの血液検査を一度することをお勧めします。 国際前立腺症状スコアにて、前立腺肥大症が疑われるときは下記のような検査を必要に応じて行います。
・直腸診
・超音波検査
・尿流量測定(排尿の勢いの検査)
・残尿測定
ー 前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症の治療は、症状に程度で決まることが多く、前立腺が大きく腫大していても排尿がスムーズに行われていれが治療しないこともあります。軽症~中等症であれば薬物治療が中心となります。薬物治療は主に尿道の広がりを良くする薬(α1ブロッカー)や前立腺を小さくする薬(ホルモン剤)などがあります。しかし、薬物治療では症状の改善が望めない場合には、手術による治療が必要となります。
手術というとお腹を切開するイメージがありますが、前立腺肥大症に対する手術の最もスタンダードな方法は、全くお腹を切開せず行います。内視鏡という非常に細いカメラで見ながら行うであるため、全く腹部に傷はつきませんし、術後の痛みも軽度で、早期退院が可能です。お腹を開けて手術することはあまりありません。当院では前立腺肥大症の外科的治療としておもにHoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)を行っています。
HoLEPとは最新の手術方法で、内視鏡を尿道から前立腺に通し、レーザーファイバーと呼ばれる機器を前立腺の内側(内腺)と外側(外腺)の境目に挿入して行います。このホルミウムヤグレーザーという種類のレーザー光を照射し、肥大した内腺(腺腫)を外腺から切り離(核出)します。腺腫を核出し、尿道を広げた後、別の機器で膀胱内へ移動した腺腫を細切・吸引しながら摘出します。
このHoLEPによる治療法はTURPに比べ出血量を少なくすることが可能です