女性泌尿器科疾患
ー泌尿器科女性専用外来
久留米大学泌尿器科では、女性患者さんが受診しやすいように、平成22年10月より、 大学病院の泌尿器科外来に「女性専用外来」を設けることになりました。より多くの女性 患者さんが、泌尿器科を受診されることによって、心身ともに健康で人生を楽しむことができればと、願っています。
久留米大学病院泌尿器科
女性専用外来の特徴
久留米大学泌尿器科の“女性専用外来”は、泌尿器科単独での女性外来です。
女性の骨盤内疾患(尿失禁・骨盤臓器脱)の診断から手術に関する、スペシャリストによる外来運営を目指しています。
○スタッフ
urogynecology グループ
陶山 俊輔 医師
林 秀一郎 医師
○外来開設
平成 22 年 10 月より、第2・4木曜日の午後が外来診察です。
ー 女性泌尿器科疾患
排尿の悩み事は恥ずかしくて病院にも行かれない、と考えている女性の方も多いと思います。
しかし近年、泌尿器科学では女性特有の排尿障害を引き起こす病気の研究が飛躍的 に進歩し、諦めていた症状が直せる時代になってきました。
以下のような症状でお困りで はありませんか?
以下の症状があるならば泌尿器科で治せる病気の可能性があります。
久留米大学病院泌尿器科ではこれらの女性特有の排尿に関する症状に対して、御相談を承っております。
・尿が漏れる。尿が間に合わない。尿が近い。
・排尿する時、下腹が痛い。尿が貯まってくると下腹が痛くなってくる。
・膣の入り口から何かが出てきている感じがある。尿がしにくい。
ー 尿が漏れる。尿が間に合わないで漏れる。尿が近い。
何らかの原因で意図しない尿漏れを認める症状を尿失禁と呼びます。女性の場合、男性に比較して尿失禁に罹患する可能性が高く、高齢であるほど頻度が高くなります。 尿失禁には様々なタイプがあり、きちんとした診断が治療のポイントになります。特に多いのが切迫性尿失禁腹圧性尿失禁です。二つの要素を持ち合わせた患者さんは混合性尿失禁と診断されます。
【腹圧性尿失禁】
お腹に力が入った時(咳・くしゃみや重たいものを持ち上げた時など)に尿意がないのに漏れてしまうのが特徴的です。「“ちょろっ”と漏れる」と訴えられる場合が多いです。(スライド4)多産経産婦で閉経後に起こるのが一般的です。症状を十分把握したのちに患者様のご希望に沿う形で治療方針を決定します。治療は骨盤底筋体操、内服薬による治療、手術療法があります。近年、手術療法(スライド5)の進歩が目覚しく、傷が付かず短期間の入院で加療することが可能になりました。
【切迫性尿失禁】
尿意切迫感(突然湧き上がる尿意)があり、トイレに駆け込む前に漏れてしまうという症状が特徴的です。尿意に伴って漏れるというのがポイントです。切迫性尿失禁は過活動膀胱(尿は漏れないが我慢出来ないような尿意を感じる症状)に付随して起こる病気で、その原因はまだ完全に解明されていません。水仕事をする際に尿意が我慢出来なくなると訴える患者さんもいます。 切迫性尿失禁は過活動膀胱の治療と同様に内服薬による治療、生活指導(水分やカフェイン制限、生活習慣や排尿環境整備指導)を行います。近年様々な治療薬が開発され、良好な治療成績が出ています。
【過活動膀胱】
頻尿(何度もトイレに行く)、尿意切迫感(突然湧き上がる尿意、トイレが我慢できない)、切迫性尿失禁(トイレに行くまで我慢できずに漏れてしまう)の3症状が特徴的です。現在テレビのCMでもちょくちょく見かける病気になったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
治療法としては、切迫性尿失禁と基本的に同じです。現在の治療薬は大変効果的で、多くの患者さんに喜んでもらっています。上の3つの症状が当てはまると思われる方は、積極的に泌尿器科を受診されるとよいと思います
ー 排尿する時下腹が痛い。尿が貯まってくると下腹が痛くなってくる。
膀胱に痛みを自覚される場合は、膀胱に何らかの炎症が存在する可能性があります。
【細菌性膀胱炎】
細菌性膀胱炎は全女性の半数以上が、生涯に一度は罹患すると言われるほど多い病気です。外尿道口(外陰部のおしっこ出る穴)から細菌(最も多いのは大腸菌)が侵入し、膀胱の中で菌が繁殖することで炎症が起こります。原因は外陰部の不潔や、性交渉が誘因と言われていますが、冷えやストレス、体調不良による体の抵抗力が落ちたことが誘因になることもあります。
【間質性膀胱炎】
尿検査では異常がないのに頻尿、尿意亢進、尿意切迫感、膀胱不快感、膀胱痛などの症状を呈する原因不明の難治性疾患です。特に頻尿が強く、これは膀胱に蓄尿出来る量が極端に少ないことによります。症状は寛解と増悪を繰り返し、ホルモンや食事、ストレス、便秘、生理の影響を受けると考えられています。罹患率は全人口の0.1~1%と考えられ、女性に多い傾向があります。この病気の原因はよくわかっていません。  症状から間質性を疑う場合は膀胱鏡検査をします。間質性膀胱炎では膀胱粘膜に特徴的な所見があります。治療は内服薬ですが、患者さんの症状に合わせて様々な薬剤を試していきます。また麻酔をかけて膀胱を水圧で拡張する方法が有効で、当科でも行っています。
ー 膣の入り口から何かが出てきている感じがある。
多産、経産婦に多いとされている病気で骨盤性器脱を疑います。立ったり、重たいものを持っていると何かが挟まってくるような感じ、とか、お風呂などで飛び出ているものを触れてびっくりした、などの症状があります。個人によって排尿の症状も多彩で、尿が近かったり出にくかったりする場合、また便秘が出現する場合もあります。
骨盤性器脱は骨盤のヘルニアです。多産経産婦に多く、産道が緩むことでそこから骨盤臓器がヘルニアを起こして飛び出てくる病気です。骨盤底を支える骨盤底筋が弱くなること、また骨盤臓器を支える靭帯が弱くなることで起こると考えられています。
骨盤性器脱に対しては様々な治療法が開発されては、結局再発する場合が多く、治療成績が安定しませんでしたが、近年ポリプロピレンメッシュを用いたヘルニア防止術が日本国内で広く行われ、良好な成績を収めています。当科でもこの術式を取り入れ診療を行っています。手術を行うことで排尿症状や排便症状も改善が期待出来ます。

これらの他に、尿潜血もよくみられます。自覚症状はなく、健康診断で「尿に目に見えない血が混ざっていますよ」と指摘されます。尿に目に見えない血が混ざる原因は、腎臓から尿道の出口まで、つまり尿の通り道すべてで、病気が考えられます。たとえば、尿管結石、尿管ポリープ、腎下垂、悪性腫瘍などです。治療の必要な病気もあれば、治療しなくてもよい病気もありますから、もしも健康診断で指摘されたら、一度専門的に調べてもらうのが良いでしょう。